日本人に古くから珍重されてきた「初物」。初物を食べるとなぜか幸せを感じてしまいます。日本人は初物を好む民族といわれていますが、それはなぜなのでしょう。
初物が持つ誘惑と魅力とは!その感動をもたらす初物について調べてみました。
目次
■初物とは?
初物とは、実りの時期に初めて収穫された農作物や、
シーズンを迎え初めて獲れた魚介類などのこと。
初物には他の食べ物にはない生気がみなぎっており、
食べれば新たな生命力を得られると考えられていました。
昔は初物を最初に口にできるのは朝廷や有力な武家だったそうです。
やがて町民が財力をつけた元禄の頃になると、
反骨精神とあいまって「お上よりも先に食べる」という風潮が江戸中に広まったといわれています。
人気の初ガツオは早朝の相模湾で釣られ、
早船や早飛脚でその日のうちに江戸に運ばれていました。
1本が2~3両(現在の10万円以上)で取引されることも。
しかし“江戸っ子の粋”とされる、初物を食べるという行いが加熱し
いろんな食材の高騰を招いてしまいます。
それを見かねた幕府が「初物禁止令」を出したといいますから
いかに江戸の人々が初物を狂騒していたかがわかります。
■初物七十五日って?
「初物七十五日」ということわざがあります。
“初物を食べれば75日長生きできる” という意味です。
これはある死刑囚の話からきています。
江戸時代、刑が執行される罪人には「最後に食べたいもの」を与える習慣がありました。
ある一人の罪人が選んだものは、時季外れのものであったため、
その初物が出るまで75日かかり、罪人は75日生き延びることが出来たそうです。
これは、一日でも長く生きるために死刑囚が知恵を働かせたといわれています。
この話から、庶民の間では
「初物を食べると七十五日長生きできる」といわれるようになりました。
「初物を食べたから寿命がのびた」のではなく
「初物を食べたいと望んだから寿命がのびた」わけなのですが、
この話が縁起担ぎ(縁起物)の意味でも使われるようになったとされています。
地域によっては東の方角を向いて笑いながら食べると
福が舞い込んでくるという言い伝えもあるそうです。
江戸の人々が初物に熱狂した背景には
このような縁起担ぎの意味も大きかったようですね。
■春夏秋冬の自然を感じて
「初物七十五日」は、もうひとつ、
中国の五行(木・火・金・水・土)から来ているという説です。
季節に当てはめると、
春は木気、夏は火気、秋は金気、冬は水気、土用が土気となり
5つの季節で1年を割ると75日になります。
つまり75日周期で季節が変わり、
その季節の旬の食べ物が獲れるというもの。
すなわち、昔の人は季節の変わり目の初物には、
これから始まる季節に見合ったパワーが詰まっていると考えました。
たとえば、早春の頃に出るふきのとう、うど、ワラビやコゴミなどの山菜は
老廃物を押し出す作用をもち、体内の代謝を良くしてくれます。
秋田県ではイタドリの若芽をてんぷらや塩づけにして食べたりしますが
利尿効果があり、これから暖かくなり始める気候に合わせて
春の気を活性化、体調を整えてくれる働きがあるといわれています。
人気の初ガツオは「勝つ魚」「勝男」に通じ
「初鰹を食べると長生きできる」とされ、大変珍重されました。
また、立春から88日目にあたる「八十八夜」に摘む新茶は日本茶の初物。
末広がりの八が重なることで不老長寿の縁起物とされ
延岡市の北川町では、八十八夜のお茶を飲むと
マムシにかまれないと信じられていたんだそう。
たしかに季節ごとに登場する旬の素材は、見るからにみずみずしく生命感に満ち溢れており、
これを口に入れればいかにも長生きできそうです。
現在はいろんな食材がスーパーで売られ、
いつでも食べられる世の中になりましたが
昔の人が初物を好んで食べたという食文化は現代も残っています。
季節の境が曖昧な今だからこそ、
その季節にしか獲れない初物に私たちは心を奪われてしまいます。
自然の産物を上手く食生活に活かして共存していた昔の人、
医食同源の力って凄いと思いますね♪
まとめ
その年に初めて獲れたものを誰よりも早く頂けるというのはうれしい限り。
「初物を食べると長生きできる」ということわざも、縁起かつぎみたいなもの。
初物には生気がみなぎり勢いがあるため体に栄養とパワーを与え、いかにも長生きできると思えますね。
確かに出始めのものには勢いがありパワーもありますから、少々高くてもまだ出回っていない初物は食べたい衝動に駆られ食した後は感動に包まれるものです。((´∀`))